一般社団法人 軽金属学会

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エッセイ

コミュニケーションの役割

平成24年5月1日掲載

野田 雅史

千葉工業大学附属総合研究所研究員
工学部機械サイエンス学科船見研究室

 

 軽金属学会第121回春期講演大会において優秀ポスター発表賞を賜り,それをきっかけとして,リレーエッセイ執筆の機会を頂きました.ポスターにご質問下さいました皆様,お声掛け下さいました皆様に深くお礼申し上げます.

 研究成果発表に際しては,船見国男 教授,広橋光治 名誉教授,河村能人 教授,森久史 主任研究員にご指導いただきました.ここに記載しお礼申し上げます.

 以上に記したように,多くの皆様に支えながらこれまで研究と教育に取り組んで参りました.今回は折角の機会ですので,私が大学生活を通して感じる学生さんと研究ついて記載させて頂きたいと思います. ところで,大学などに籠もっていますと時間経過も早く,四季を有する日本において季節感を失いがちになります.私事になりますが、最近では子供の雛飾り、5月人形飾りや子供との遊び・会話により四季を感じることも多々あります.子供は屈託の無い直接的な要求を喋るため,親としては毎日が悪戦苦闘の日々です.

 研究室においても就職活動や4年生配属など相変わらずの慌しい春を感じながら時が足早に過ぎつつあります.講義・就職活動・卒業研究に取り組む学生さんを見ていると,とかくコミュニケーションが不足しているように感じます.子供とは違い,大人になった分,対面的に話すことに恥ずかしさを感じるのかもしれません.同時に,最近では情報タブレットが加速度的な成長を遂げ,幾つもの情報交換や連絡がE-mail・Twitterなどで行われる様になりました.会話でさえも,直接的ではなくwebを介して文字にて会話をしていることも多いのではないでしょうか?日本語は難しいですから解釈次第では誤解を生むこともあります.私はこれらが悪いと否定している訳ではありません.しかしながら,対面でコミュニケーションを計り,対話術を向上させることは色々な場面で自己の成長を促すきっかけの1つであろうと信じております.(という私は人見知りな正確なので,あまり大口を叩ける立場には無いのですが).実際には私の自己満足かも知れませんが,理解してもらえる自己表現を行うには多くの人との会話・自己表現の経験がやはり重要だと思います.

 一方,私自身の研究でも「コミュニケーション」は大きな役割を果たしております.主に汎用Mg合金およびMg-RE合金の塑性加工に関する研究を主に行っていますが,Mg合金は難加工材料です.そのため,加工や熱処理を行う際に常々「材料との対話;変形するのか?破断するのか?材料がそれを選んだ理由は何か?」を考えています.事前予測とプロセスプランは計画済みですが,「材料の気持ち」になって加工組織制御・熱処理を行うことは研究対象材料にとっての私の対話でも有り,人と接することと「言葉」が無いだけで変わらないように思えます.文献調査などの事前準備は必要ですが,材料との会話を繰り返すことで,どんなに加工が難しい材料であっても,積み重ねによって必ず解決の糸口がつかめると思い,解決のためには多くの研究者とのコミュニケーションからヒントが産まれることが多々あると思います.これらの観点から,引き続き「使われてこそ材料」の信念の基,基礎研究に打ち込んで行きたいと思います.

 最後に,リレーエッセイ執筆の機会を賜ることで,必ずしも正しくはございませんが,改めて自身考えを纏めることが出来たように思います.貴重な機会を賜りましたことを深くお礼申し上げます.

 
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