一般社団法人 軽金属学会

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エッセイ

ダイナミックな瞬間
-Hot Extrusion-

平成23年9月1日掲載

三本 嵩哲

大阪大学大学院 工学研究科
機械工学専攻
接合科学研究所
近藤研究室
博士前期課程1年

 

 この度は,優秀ポスター発表賞という素晴らしい賞を頂き,大変光栄に思っております。初めての学会発表にもかかわらず本賞を頂戴し,非常に印象深い大会となりました。これを励みに,今後もさらに精進していきたいと思います。

 ポスター発表では,多くの方々と意見交換をすることができ,これまでに気付かなかった多面的な解析・考察などに関して,貴重な助言を数多く頂くことができました。なかでも,ある一枚のSEM写真について,自分が意図していたこととまったく異なる解釈を頂いた時は,「そういう見方もできるのか!」と自分の頭の中に新しい思考回路が生まれたような新鮮な感覚を覚えると同時に,写真一枚にしても,もっと俯瞰的な視点に立ってその意味を考え,理解を深めることの重要性を痛感しました。今回の貴重な経験を糧として,より完成度の高い研究成果を目指していきたいと思います。

 ポスター発表においてご討論させていただきました全ての方に,この場をお借りして御礼申し上げます。貴重なお時間と多くのアドバイスを,本当にありがとうございました。

 さて,せっかくの機会ですので,ここで私が所属する大阪大学 接合科学研究所 複合化機構学分野(近藤研究室)とそこでの研究について,自身の体験を交えながら簡単に説明させていただきたいと思います。当研究室では,主に粉末冶金法を用いた軽金属材料(Ti, Al, Mgなど)の組織制御による高強度・高機能化に関する研究を中心に行っています。研究室の特徴は,原料粉末からスタートして押出加工材作製までの全工程をすべて学生一人で行っているというところです。さらに,研究をどのように進めるかということに関しても,多くの部分が各学生に任されており,それだけに責任重大ですが,だからこその充実感と得難い経験を味わうことができます。また,実験装置についても十分な設備があり,多くの評価試験を自ら実施することが可能となっています。 このように,自分が扱う研究テーマと材料のすべて(と言っても過言ではないと思う)を,自分でマネジメントできることが当研究室の大きな魅力だと思います。

 試料は複数の工程を経て作製する必要がありますが,なかでも特にダイナミックで興味深いのが,本エッセイのタイトルにもなっております『熱間押出加工(Hot Extrusion)』です。これは,私の研究における材料作製工程では最終工程に相当しており,本工程によって粉末固化体(粉末を成型・焼結により固化したもの)はほぼ完全に緻密化され,空隙,欠陥等の無い材料となります。当研究室では,主にこの押出加工材から各種試験片を作製し,組織構造や力学特性を評価しています。私が扱っているチタンの場合,熱間押出加工前の予備加熱として,先の粉末焼結体を1000℃に加熱します。皆さんは“1000℃”というものを見たことがあるでしょうか? 私の場合は,先輩が行うチタンの押出加工に立ち会ったとき,生まれて初めて“1000℃”を自分の目の前で見ました。1000℃に熱せられたチタンの焼結体はオレンジ色に光り輝いており,私は興奮と恐怖が入り混じった感覚というものを実感しました。さらに,その焼結体を200 tonプレス機(写真参照 左:近藤教授,右:三本,奥に見えるのがプレス機)で押出した際には,大変形にきしむチタンの音を,これまた生まれて初めて耳にしました。加えて,限界出力にうなりを上げるプレス駆動用の油圧ポンプユニットにも,機械工学科の学生ならでは(?)の興奮を覚えました。このように興奮と初めての連続であった押出加工も,今では自分で行うようになり,安全作業のもとで毎回,良い緊張感と適度な興奮を持って実験に挑んでいます。

 以上のように,日常生活ではまず経験し得ないようなダイナミックな瞬間に出会えたことは,学生として大変貴重な体験であると確信しています。このような実験そのものの面白さに加えて,我々が用いている粉末冶金という手法のユニークさも手伝って,少々忙しいながらも,楽しく有意義な研究室生活を送らせてもらっております。

 後半はほとんど自分の話になってしまいましたが,悪しからずご容赦ください。

 最後になりましたが,この場をお借りして,日頃より多大なるご指導・ご鞭撻を賜っております近藤勝義 教授,梅田純子 助教,今井久志 特任研究員,近藤研究室の皆様,そして私を大学院に進学させてくれた理解ある両親に心より感謝の意を表します。

 
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