一般社団法人 軽金属学会

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エッセイ

軽金属との出会い

平成18年11月1日掲載

八太 秀周

住友軽金属工業株式会社
研究開発センター 第一部

 

はじめにこの場をお借りしまして、「自動車用アルミニウム合金の微細組織制御に関する研究開発」で第23回軽金属奨励賞を受賞させて頂きましたことを、軽金属学会ならびに推薦いただきました皆様にお礼申し上げます。

 研究を初めて行ったのは大学時代の卒業研究であるという方も多いのではないでしょうか。私の場合、大学での研究が軽金属との出会いでもありました。「超軽量マグネシウム-リチウム合金の開発」。恩師 小島陽先生、鎌土重晴先生(長岡技術科学大学)から頂いた学生時代のテーマでした。マグネシウムに約37mass%のリチウムを添加した合金であり比重が約0.95。その合金の鋳造が終わり、実際にその合金を手に持つと、まるで木材でも持っているような不思議な気にさえなる合金した。小さく切断し表面コーティングした後、水に投入すると見事に水に浮かび上がり、確認の意味で水の中に完全に沈めても再び浮かび上がり、さらにもう一度沈めても浮かび上がりました。世界初の「水に浮く合金」の誕生でした。言葉にするのは難しいのですが、本当に楽しいと思う実験で感動させていただきました。今この実験テーマ振り返ってみると、そのテーマを考えたその創造力に大変感心致します。

 住友軽金属工業(株)に入社後、自動車用のアルミニウム合金を研究するようになってから、それまでの自動車の外観や走行性能を中心とする見方から、どの部品がアルミニウム合金製なのか、鉄製品なのかが気になることが多くなりました。自動車に使用されているアルミニウム合金は熱交換器、フード、足回り部品などをはじめとして有名ですが、ほかに普段目に付かない小さな部品でも、実はアルミニウム合金で作られているというものがあり、幅広く使用されていることを実感させられます。これぞ諸先輩方の努力、さらにはその創造力豊かな発想の賜物だなと思う瞬間です。

 さらに自動車材に限らず研究開発を始める際に研究論文を調査すればするほど、その論文数の多さと充実したその内容に感心させられる時があります。その反面、さらなる特性向上のためにはどこに研究開発の余地があるのかをひたすら考え続け、さらにその解析手法にも工夫が必要な場合があります。まず第一歩と思い過去の再現実験を行った実験でさえも、結果が過去と異なり、「なぜ結果が過去の結果と同じようにならないのか」分からないこともあります。そのような中で、頭を白紙に戻し気分をかえるとなぜかすっきりし、その原因がみつかり、さらにその原因を逆に応用して目標が達成されたときには特に感激で、慎重に一つ一つ積み重ねるとともに自由な発想も必要なのだと実感します。こういった時になぜかAlbert Einsteinの有名な言葉で”Imagination is more important than knowledge”を思い出します。研究および開発を楽しくしてくれる言葉だと思います。

 最後に、創造力だけではいけないと思いますが知識と創造力を心がけ、今後も楽しいと思えるような研究開発できたらと思います。

 
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