一般社団法人 軽金属学会

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エッセイ

学会について思うこと

平成21年1月5日掲載

村 田 眞

電気通信大学 知能機械工学科
知的生産学講座
教授

 

 私が軽金属学会に関わりを持ったのは、大学の助手となり研究活動を始めてから約10年経ってからである。都立大学(現:首都大学東京)の西村先生より、軽金属学会で形材の曲げ加工研究部会を立ち上げたので、この研究をやらないかとお誘いを受けのが、きっかけである。この研究部会は、自動車の軽量化のためにスペースフレーム構造の骨格となる形材について、特に曲げを対象とした。研究部会は2つの報告書を提出し、平成11年度に終了した。

 スペースフレーム構造の自動車がほとんど生産されていない現在、この報告書が活用されていないのは、残念である。

 私の専門分野は塑性加工であり、日本塑性加工学会には、大学院の修士学生の時より所属していた。当学会は、会員数が約4,000名で、軽金属学会と比較して、倍の会員数を有している。当学会も生産や材料系の学会と同様に、残念ながら斬減傾向にある。塑性加工学会と軽金属学会の違いは以下のとおりである。

 日本塑性加工学会は、主となる会社が存在しないため、大学関係者が主となって運営しているが、軽金属学会は、アルミニウム大手6社が主導的役割を果しているように感じられた。また、日本アルミニウム協会とも連携しているところが見受けられる。それに対して塑性加工学会は、メインとなる企業もなければ、アルミニウム協会に対応する産業界からの協会はない。

 金銭面に対しても、何かシンポジウム等の企画を行う場合には、塑性加工学会では、予算企画書を提出し、それから理事会に承認されることが前提となっている。その予算案は原則として黒字になることが求められる。赤字になっても、責任を取って、個人的に補填せよとは言われないが・・・。その企画が当たり多くの参加者があるかどうかは、蓋を開けてみなければ分からないのが現状である。参加者が少ない時には、つてを頼りに参加者を募ることもしばしばである。

 また、日本塑性加工学会には研究分科会(軽金属学会では、研究部会)は、現在20余の分科会が存在し、活動を行っている。学会は1年間に18万円の援助をしてくれているが、それ以外は独立採算である。有料の企画を行った場合には、赤字であろうと黒字であろうと、全体の収入から1割は学会本部に納めなければならない。さらに、その企画の広告を学会誌に掲載するには、1頁につき、1万円の広告費を支払わなければならない。塑性加工とは産業部品を安い価格で納品することが、重要課題となっており、この分野では、「銭」という単位が残っているために、金銭面で細かくなっているように思われる。分科会は1年に1回会計報告書、貸借対照表、、1年間の活動報告書と来年度の活動予定表を提出することが義務づけられている。論文投稿に際しても、投稿規程が20数ページに渡り細かく定められ、論文を記述するのに一苦労する。軽金属学会では、その点かなり楽であることは、軽金属学会会員諸氏がご存知のとおりである。

 日本塑性加工学会も軽金属学会も春と秋の2回講演会を開催し、発表論文数はどちらも200余である。しかし、日本塑性加工学会の総会は、春の講演会の年1回である。軽金属学会の総会を年2回行っているが、事務手続き上のこともあるが年1回でよいのではないかと思う。

 まだまだ両学会の違いあるが、気のついた点を記述した。それぞれの学会はそれぞれの歴史や時代背景等によって、運営方法や規定等に差があるものと思われる。軽金属学会は会員数が2000名と少ないため、家族的な親しみがある。

 最後に、私はアルミニウムの特色を利用した、何か優れた製品を育てる新しい塑性加工技術を生み出すことを常に考えている。大学の職を辞するまでに、この新しい技術を育て、アルミニウムの需要拡大のために、貢献できればと思っている。

 
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