一般社団法人 軽金属学会

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エッセイ

国体炬火トーチホルダー部にアルミニウム鋳物を初めて採用

平成18年8月31日掲載

椿野 晴繁

(財)ひょうご科学技術協会
兵庫国体に採用された炬火トーチ
(ホルダー上部のマスコットがアルミニウム鋳物)

 

第61回のじぎく(野路菊:兵庫県の花)兵庫国体が本年9月30日から10月10日まで、兵庫県で開催される。兵庫県での開催は50年ぶりとか。その炬火リレーが9月10日から兵庫県下10コースのリレーで市町村を回り、開会会場である神戸市のユニバー記念競技場へ集まる。炬火とは、オリンピック大会の聖火にあたるもので、たいまつのことである。

 そのリレーのトーチ(Fig.1)は、大会独自のもので、650 mm長さのアルミニウム筒と先端に直径160 mmのアルミニウム皿がつき、さらに、ホルダー部分に大会マスコット「はばタン」をあしらっている。筒中にライター用オイル100 mlを入れ、難燃性繊維の芯を伝わって、上部の黄銅バーナー部分で燃やす仕組みである。

 このトーチは燃料込み総重量を720 gの軽量化に成功した。参考までに、トリノ五輪でのガストーチは約1850 g、市販のトーチは約760 gであるといわれている。兵庫県下の工業系高校がトーチ部を、ホルダーのマスコット鋳造を朝日アルミニウム株式会社(兵庫県明石市貴崎5-9-19)が担当した。短期間で完成する困難さはあったが、名誉なことなのでその限定品作成を会社として受け入れたとの当社の上層部の方の話であった。


大会マスコット(はばタン)の
中空アルミニウム鋳物

 この試作品の作成に際しては、兵庫県立工業技術センター所有の樹脂・紙造型のラピッド・プロトタイピング(RP)技術の大きな支援があって、比較的短期間で試作品を作成することが出来たらしい。しかし、複雑な形状のため、特に羽根の尾っぽ部の鋳造に苦慮したとか。さらに、マスコットの重量を200 g以下に抑える必要があり、三次元形状データを検討し、たびたび鋳造試作を重ね、中子の複雑な型構造とAC4Bを基本とした流動性のよい材質の選定の結果、Fig. 2の薄物砂型鋳造の製作に成功した。その長さ、幅とも約130 mm、高さ最大80 mmで、表面に塗装を施こし、マスコットに仕上げるのである。7月上旬現在、約500個の作成を開始した。

 
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