一般社団法人 軽金属学会

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エッセイ

学生生活を振り返って

平成18年6月29日掲載

伊藤 洋介

日本大学大学院生
産工学研究科
博士前期課程2年
〔現在:トヨタ車体式会社〕

 

 地元の友人とお酒を飲んでいる席で「理系学生はオタクが多くて気持ち悪い。」と言われた事がある。そのとき自分はそんなんじゃないとキッパリ言い切ったが、後日ふと考えてみた。思い当たったことをいくつか並べてみると、

1. モーターショーでトラックの下に潜り込み溶接ビードを眺め、写真に収めているときにスタッフに気味悪がられた事がある。
2. 友人のバイクの溶接部を見て「これはきれいな溶接だね。」と言い気味悪がられた事がある。
3. デパートの金物売り場で鉄とチタンとアルミの丸棒をそれぞれ手に取り、「ほら、同じ形なのに重さが違うでしょ。これは比重が違うからなんだよ。」と言って呆れられた事がある。
4. 同じく金物売り場で角材に「軟鉄材料(軟らかく、炭素の量が少ない。)」と記されたシールが貼ってあるのを見て、「これはS15CかS25Cじゃないかな。」と言ってしつこいと言われた事がある。
5. 研究でチタンを扱っているために、貴金属店でチタン製の指輪やネックレスを見てもありがたみが全く無い。

などなど思い出すときりがありません。こんな私を皆さんがどう捉えるかはさておき、私と同年齢同世代の普通の人から見たら私は立派な“金属オタク”なんだなと納得せざるを得なくなりました。
 地元の友人に気持ち悪いなんていわれると、なかには落込む人もいるのかもしれません。しかし、私の場合は違いました。私は自分の研究が好きですし、何より後輩たちと飲み屋に行き、接合の話しで熱く議論することで学生生活に充実感を感じています。これは金属オタクなりの楽しみ方とでもいうのでしょうか。議論することで新しい知識が増え、時には自分の考えに修正を加えることができ、さらに研究に対する意欲が増す。私の研究はこの繰り返しが基本となって少しずつ熟成しているのではないかと感じています。
 この成果の一つとして、第109回軽金属学会秋期大会のポスターセッションで優秀ポスター賞を頂きました。まず始めに、なぜ私が・・と、驚いたことも一つですが後輩と楽しく取り組んだ結果がこのような賞につながったことはとても嬉しいことであり、今後の私の人生の自信につながる賞でありました。振り返ってみるとこの賞は、諸先生方のご指導と油まみれになって共に実験を進めてくれた学部学生の力によるところが多くとても感謝しております。小学校から続けている剣道の恩師が良く口にしていた言葉の一つに、「継続は力なり。勝っても負けても日々精進を続けることが自分の成長につながる」という言葉があります。たとえ同年齢同世代の友人に“金属オタク”と思われても、一つのことに目的意識を持ちながら自信を持って取り組むことは大切なことであり、将来社会に出たときにも持ち続ける心構えであるなと感じました。金属オタクも金属の道を追求し続ければエンジニアの卵としていつか大きく成長するときが来るのではないかと信じ、この経験を今後の人生に活かしていきたいと思います。
 余談ではありますが、第109回軽金属学会秋期大会が開催されたちょうど一週間前に学園祭のイベントの一つとしてフォトコンテストがありました。研究の合間に後輩と共に撮影し、出品した写真がそろって入賞いたしました。平成17年11月は振り返れば驚きの連続でありました。
 私にとって学生生活の集大成の一つとして、実験の成果を評価していただいたポスター賞と実験の息抜きのつもりで撮った写真での賞の2つの賞を頂いたことは、研究、キャンパスライフともに楽しむことができた生涯忘れることのできない貴重な経験であります。今後も、継続は力なりの言葉を忘れることなく新たなことに挑戦し努力していきたいと思います。
 最後にこの場をお借りして、今日に至るまで私の研究に対し温かく見守っていただき、そして多大なるご指導ご鞭撻を賜りました日本大学教授 朝比奈 敏勝 先生、時末 光 先生、加藤 数良 先生に感謝申し上げます。

 
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