軽金属のお話

チタンの歴史

2.現在の歴史を築く

2.1 チタンの起源

 酸素、窒素、炭素、鉄、水素などの不純物を少量含んだ純チタンです。商業的に用いられますので、工業用純チタンと呼ばれることが多いです。
代表的な工業用純チタンはJIS2種の工業用純チタンです。特徴は、酸素と鉄の含まれる量によって、やわらかいものから強いものまで変化させることができます。これはすべてのチタン材料が持つ特徴ですが、密度が鉄の60%ですので、同じ強さの物でも、鉄で作った場合に比べて非常に軽くできます。

 発電所の熱交換器(熱い蒸気を海水で冷却する装置)のパイプや建物の外壁や屋根(東京ビッグサイトなど)に使用されています。

2.2 アルファ(α)型チタン合金

 α相(低温相)単相で構成されたチタン合金です。主に、アルミニウム(Al、α安定化元素)を添加しています。代表的な合金はTi-5mass%Al-2.5mass%Sn(Sn;すず)合金です。
特徴は、比較的高い温度でも安定しており、さらに、低温でも脆性的(ガラスのような)破壊をしないなどです。

 冷たい液体(液化天然ガスなど)を入れる容器やメガネのフレームなどに使われています。

2.3 アルファ-ベータ(α-β)型チタン合金

 室温で安定していて、錆びにくいα相と比較的形が変えやすくて高い温度(400~500℃)で保持すると強さが大きくなるβ相(高温相)、の二相で構成されたチタン合金です。主に、アルミニウムとバナジウム(V、β安定化元素)が同時に添加されています。

 代表的な合金はTi-6mass%Al-4mass%V合金です。この合金はチタンを代表する合金とも言えます。α相とβ相が各々持つ特性を同時に利用できるという特徴を持つ万能合金です。

 主に航空機に使用されています。例えば、車輪を支える部分(ランディング・ギアーです)

2.4 ベータ(β)型チタン合金

 β相単相で構成されたチタン合金です。主にバナジウムやモリブデン(Mo、β安定化元素)を添加します。

 代表的な合金は、Ti-15mass%V-3mass%Cr(Cr:クロム)-3mass%Sn-3mass%Al合金、Ti-15mass%Mo-5mass%Zr(Zr;ジルコニウム)-3mass%Al合金(日本で開発)、また生体用金属材料として注目されているTi-29mass%Nb-13mass%Ta-4.6mass%Zr合金(日本で開発)があります。

 室温でも加工性(形を変えること)がとてもよく、また、アルミニウム合金と同じく時間と共に強くできるという特徴(時効硬化性)を持っています。現在、最も注目されているチタン合金です。

 α-β合金と同じく航空機に使用されています。さらに、骨や関節の代わりになる部品(骨プレートや人工股関節)などに使用されています。